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大気海洋圏物理系 M2所信表明セミナー(第3回)のおしらせ
日 時:2000年 6月 15日(木) 午前 9:30 〜 12:00
場 所:地球環境研究科管理棟 2F 講堂
発表者:赤澤 悠子 (大循環力学講座)
題 目:地球温暖化が積雪域に及ぼす影響
発表者:吉田 充 (大循環力学講座)
題 目:赤道波と結合した雲擾乱のスペクトル特性
発表者:磯村 計郎 (気候モデリング講座)
題 目:地球温暖化に伴う海洋のCO2吸収量の変化について
発表者:大畑 めぐみ (気候モデリング講座)
題 目:堆積モデルを用いた海底堆積分布に関する研究
発表者:西川 寛子 (極域大気海洋学講座)
題 目:巻雲発生時の巻雲内部及び周辺の大気状態について
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地球温暖化が積雪域に及ぼす影響 (赤澤 悠子) 発表要旨:
IPCC(1990)によると、全球平均した地表面気温は最近40年間の間に約0.2〜 0.3℃上昇していた。気温の上昇は、全球で見られたが、その度合は一様でな く北緯40度から北緯70度の大陸上で最大であった。この変化の重要な過程の一 つとして考えられているのが積雪、氷のアルベドフィードバックである。 つまり、積雪面積が減少することにより日射の反射が少なくなりさらに昇温が 進むという現象が起こっていると考えられる。 また、Groisman et al.(1993)は1973〜1992年の21年間の間の衛星データから 北半球の陸上では積雪面積の減少がみられ、それは気温と密接な関係があるこ とを示した。積雪面積の減少の割合は、北アメリカ及び東アジア全体では 4.3*10^4 (km^2/year)、ヨーロッパと西アジア全体では3.0*10^4(km^2/year) と大きなものであった。 このようなことから、今後の研究では積雪に注目し、温度により積雪域が変 化するときにどのような過程が効いているのかを明確にすることを目的とする。 その第一歩として、IPCCのシナリオに基づいて大気中の二酸化炭素濃度を90 年以降年率1%で増加させた場合のGCM実験のデータから積雪、降雪及び大気 のさまざまな変数について解析していく予定である。
赤道波と結合した雲擾乱のスペクトル特性 (吉田 充) 発表要旨:
熱帯海洋上の積雲対流はオーダーが1000キロのラージスケールで 規則的に組織化されており、赤道波や台風のような渦型の擾乱との 関係が注目されている。例えば、熱帯海洋上のスーパークラウドク ラスターがケルビン波の構造を持った大気擾乱を伴っていたり、大 西洋、あるいは日付変更線付近で見付かった混合ロスビー重力波も 雲擾乱とともに確認されている。また、他にもロスビー波や慣性重 力波といった波も太平洋上で観測されている。 こうした赤道波には出現する時期や場所が決っているようで、今 回の発表では太平洋における赤道波と関係した雲擾乱のスペクトル が季節的な特徴を持っていることに焦点をあてて話をする。 今後の研究では赤道波のなかであまり研究例がない赤道ロスビー 波の出現する時期や場所を太平洋だけでなく、大西洋やインド洋に ついても調べてみたいと考えている。
地球温暖化に伴う海洋のCO2吸収量の変化について (磯村 計郎) 発表要旨:
産業革命以降、排出され続け、加速度的に増大してきた人為起源CO2は、地球温 暖化を引き起こす主な要因とされ問題になっている。海はこの過剰となったCO2 を吸収する作用を持っている。しかし、温暖化が起これば、海が成層化して海洋 循環のパターンが変わり、CO2は海に吸収されにくくなり、ますます温暖化が加 速するというフィードバック効果があるといわれてきた。Maier-Reimer (1987,1996),やSarmientoら(1992,1998)によって、炭素循環モデルを用いたこれ らのパイオニア的研究がなされた。彼らの実験結果によると、温暖化が海のCO2 吸収量にあたえる効果は大きいが、大気のCO2濃度に換算すると、結局このフィ ードバック効果は大きいとは言えないというものであった。しかし彼らの実験方 法には、一長一短があり、いくつかの点で不満の残る点もある。また、物質循環 モデルの詳しい解析結果も論文としてレビューされていない。 そこで、これからの研究予定としては、このフィードバックメカニズムについて 炭素収支を詳しく解析することにより、理解を深めていくつもりである。 そのために、CCSRの阿部さんによる大気海洋結合モデルを動かした結果と山中& 田近(YT)物質循環モデルを用いる予定である。
堆積モデルを用いた海底堆積分布に関する研究 (大畑 めぐみ) 発表要旨:
過去の気候を知るために,多くの人によって海底コアが調べられている.海 底の堆積過程をより理解するには,モデリングが必要があるが,日本において は行っている人がいない. 本研究では,海洋中の物質が蓄積する海底堆積層に着目した.堆積モデル (D.Archer,1991)を用いて全球分布を再現し,どの様な過程が分布に影響して いるかを明らかにする.
巻雲発生時の巻雲内部及び周辺の大気状態について (西川 寛子) 発表要旨:
巻雲(対流圏上部に発生する雲)が温室効果をもたらすことが明らかに なり、温暖化予測の研究において巻雲は大変重要視されている。しかし、 巻雲は高高度に存在し光学的・幾何学的に薄いという特徴を持つために観測 が難しく観測に基づく解析事例も少ないため、未だ定性的にも定量的にも 特性を正確に見積もることができていない。 しかし近年になってリモートセンシング(衛星、レーザーレーダー、ミリ波 レーダー、MUレーダーなど)の技術が進歩してきたために少しずつ巻雲の特性 が明らかになってきている。 今後の研究ではこのようなデータの中からMUレーダー、衛生画像、レーザー レーダーのデータを使い解析を進めようと考えている。特にMUレーダーデータ は13年分の長期間にわたるデータがあるので、13年の間に出現した巻雲を 一つ一つ抽出しその大気状態の特徴をまとめて一つの表を作ろうと考えている。
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