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第 2 回 大気海洋物理系 B 棟コロキウムのお知らせ

日 時:1998年 4月 27日(月) 午後 4:30 〜 6:30
場 所:地球環境科学研究科 管理棟 2F 講堂

発表者:須股 浩 (大循環力学講座 DC2)
題 目:理想的な境界条件のもとでの海洋東岸の構造とその水温躍層に対する影響

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理想的な境界条件のもとでの海洋東岸の構造とその水温躍層に対する影響 (須股 浩) 発表要旨 :

  海洋の風成循環に関する話題です。 
  
  亜熱帯循環系の水温躍層の維持機構を説明するために Luyten et al(1983) に 
  より提唱された通気水温躍層理論は、その後 Pedlosky and Robbins(1991) や 
  Huang (1990)により、厚さの変化する混合層を含むモデルへと拡張されてきた。 
  これらの理論的なモデルには、東岸境界の扱いに問題となる部分があり、未だ 
  解決されるに至っていない。 
  この東岸境界の問題に着目して、その水温躍層構造に対する影響を理論的に考 
  察したものに Pedlosky(1983) や Huang(1989)などがあり、東岸の構造が内部 
  領域の水温躍層に影響を与えることが指摘されている。 
  
  これら東岸境界条件に関する未解決の問題を整理すると、 
  
   1. Pedlosky and Robbins(1991)や Huang(1990)の通気水温躍層モデルは no- 
      net-zonal-flux の境界条件が満たされていない。 
      (no-net-zonal-flux :東岸境界で鉛直積分した東西流量がゼロになる) 
   2. no-net-zonal-flux の条件を考えると、東岸に鉛直輸送が重要となるよう 
      な境界層の存在が指摘されてきたが(Pedlosky(1983) etc)、どのようなも 
      のか不明のままである。 
   3. Pedlosky(1983)や Huang(1989)は東岸の状況を仮定して、その水温躍層に 
      対する影響を論じたが、東岸の構造が決まらなければその具体的な影響は 
      調べられない。 
  
  これらの問題について考えるために、理想的な境界条件のもとで OGCM による 
  数値実験を行ない以下のような結果を得た。 
   
   1. no-net-zonal-flux を満たすような流れの場を形成するために、東岸では 
      混合層が急激に深くなり、混合層の底に密度gap のようなものが出来る。 
   2. 拡散系数が小さい極限においては、東岸の混合層の深さは海面境界条件と 
      基本成層により決定される。 
      (東岸の成層構造は外部的な条件によって決められる) 
   3. 上記の密度gap の存在により、東岸から高渦位の海水が海洋内部へと供給 
      され、渦位分布や Bernoulli function など解析から、東岸の影響は亜熱 
      帯循環の南の縁に沿って西へ及ぶことが示唆される。 
  
  更に時間があれば、 
  
   a. along shore windstress を東岸付近に与えた場合の数値実験結果 
   b. 東岸から tracer を流した数値実験結果 
  
  についても紹介する予定。 

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連絡先

岡田直資 / 谷口 博 @北海道大学大学院地球環境科学研究科
大気海洋圏環境科学専攻気候モデリング講座
mail-to:taniro@ees.hokudai.ac.jp / Tel : 011-706-2372