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第4回 大気海洋物理系 B 棟コロキウムのお知らせ

日 時:1998年 5月 25日(月) 午後 5:10 〜 7:10
場 所:地球環境科学研究科 管理棟 2F 講義室

発表者:谷口 博 (気候モデリング講座 D1)
題 目:東西一様基本場に於ける慣性不安定・帯状非一様モードの特徴
    とメカニズムについて - 回転と鉛直構造依存性 -

※ 今回は開始時刻が通常と異なります. ご注意下さい.
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発表要旨:

 熱帯の冬期上部成層圏大気中において, 正負の温度アノマリーの極大が鉛直 方向に交互に連なって現れることが Hitchman et al. (1987),林(1997)らによ る研究で明らかにされた. この擾乱の構造は, その形態からパンケーキ構造 (pancake structures)と呼ばれている. この現象は,中緯度のプラネタリー波 により励起された慣性不安定によるものと考えられている(Hitchman et al. 1987, etc.).また,金星の GCM 実験に於いて慣性不安定の条件を満たす 領域が存在していることを指摘した例(Allison et al. 1994)や, 木星型惑星 の帯状風プロファイルの維持機構の一つとして, 慣性不安定による角運動量の 混合を示唆した議論(Allison et al. 1995)などがこれまでになされてきた.

赤道域に於ける慣性不安定の理論的研究として, 東西一様基本場を扱ったもの に Stevens(1983) がある. 基本場として考えられたのは線形シアー流, 東西 ジェット流の 3 通りである, 彼は線形安定論を行い, 東西一様擾乱の慣性不 安定モードの構造と成長率を明らかにした. さらに, Boyd and Christdis(1982), Dunkerton(1983) らは東西非一様擾乱について考察を行ない,東西一様擾乱 よりも非一様擾乱の成長率が高くなる場合の条件を求めている.

しかし,東西非一様擾乱のメカニズムについては,これまでほとんど議論さ れたことがない.また,惑星大気に於ける慣性不安定が議論されているにも関わ らず,他の惑星を想定した広いパラメータ空間での研究はほとんどなされてい ないのが現状である.

以上のことから,本研究は固有値解析を手法として,自転角速度を変えた場合 などの広範囲のパラメータスタディにより, 慣性不安定の性質を明らかにする ことを目的としている.解析には赤道β平面プリミティブ方程式を用いた.外 部パラメータは主にε(≡ m^2/N^2)とβ(≡2Ω/a),γ(基本場の南北シアー) である.ここで,Ωは自転角速度,a は惑星半径を表し,m は擾乱の鉛直波数, N はブラント・バイサラ振動数である.摂動は鉛直方向に波数 m のモード展 開を行い,水平成分のみを考える.基本場は Stevens(1983) の場合と同じ定 常,順圧のもの(線形シアー流,東西ジェット流)を与えた.得られた不安定モー ドの成長率と構造をもとにして,方程式系の各項のバランスを調べた.

今回は東西非一様擾乱のメカニズムについて,線形シアー流を基本場とした場 合のこれまでの成果に加え,新たに明らかになった東西ジェットを基本場とし た場合の結果を紹介する.発表ではこれらのメカニズムの比較を行い,成果を まとめる.

※ 次週 6/1(月) は岡田(D2)の予定.

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連絡先

岡田直資 / 谷口 博 @北海道大学大学院地球環境科学研究科
大気海洋圏環境科学専攻気候モデリング講座

mail-to:taniro@ees.hokudai.ac.jp / Tel : 011-706-2372