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第 55 回 大気海洋物理系 B 棟コロキウム のおしらせ

日 時:1999年 12月 20日(月) 午後 16:30 〜 18:30
場 所:地球環境科学研究科 管理棟 2F 講堂

発表者:松田 伸彦 (気候モデリング講座 M2)
題 目:海氷構造からみたサロマ湖の海氷の生成・成長

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海氷構造からみたサロマ湖の海氷の生成・成長 (松田 伸彦) 発表要旨 :

  海氷が生成・成長すると海面を大気から遮り、相互の熱交換を妨げる。であ 
 るから、それはグローバルな気候変動影響を及ぼすと考えられる。故に海氷の 
 生成・成長のしくみを明らかにすることは地球環境を考える上で有意義である 
 といえる。そこで、ここでは海洋構造に特徴があり全面結氷するサロマ湖の海 
 氷に関して調べてみた。 
  
  1998年度のサロマ湖観測で採取した海氷の結晶構造を調べたところ1997年度 
 のそれとは顕著な違いがみられた。一般に海氷は最初は風などの影響を受けて 
 gulanular(粒状)の結晶構造を示すfrazil iceが生成する。やがてfrazil 
 ice が凍結し海氷底面から静かに凍るとcolumnar(短冊状)の結晶構造を示す 
 氷が成長する。97年度はこのパターンであったが、98年度はcolumnarがみられ 
 なかった。それでは98年は海氷底面での氷の成長がなかったのか。その他の顕 
 著な違いとして98年は氷厚がかなり厚く全面結氷がしていなかったことなどが 
 挙げられ、それらが海氷構造にどのような影響を与えるのか、を調べればサロ 
 マ湖の海氷の生成・成長過程がわかり、一般の海氷についても示唆できる。 
  
  そこでまず、様々な情報より結氷の開始からfrazil iceが生成し終えるまで 
 の期間と、それ以後氷上観測終了までの期間にわけて大気との熱収支について 
 調べてみた。氷上観測期間については熱1次元モデルを用いて氷上観測データ 
 から氷厚の成長について97、98年それぞれ計算してみた。また、それ以外の氷 
 温のデータのない期間については気温から氷温を計算し,海氷の成長を計算し、 
 計算結果と観測結果との整合性、また97、98年とのちがいについて検討してみ 
 た。 
  
  つづいて、前述したモデルでは雪の厚さは観測期間中一定としていたが海氷 
 の温度の鉛直プロファイルの時系列データから雪の厚さの変化が概ね推定でき 
 るので、それも若干考慮にいれてモデルの精度の向上に努めてみた。今回の発 
 表ではその結果を示し検討してみるつもりである。 

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連絡先

伊藤 頼 / 谷口 博 @北海道大学大学院地球環境科学研究科
大気海洋圏環境科学専攻大循環 / 気候モデリング講座
mail-to:yori@ees.hokudai.ac.jp / Tel: 011-706-2357