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第 88 回 大気海洋物理系 B 棟コロキウム のおしらせ
日 時:2000年 10月 25日(水) 午後 16:30 〜 18:30
場 所:地球環境科学研究科 C棟 C104
発表者:江川 晋子 (気候モデリング講座 M2)
題 目:夏季アジアモンスーンの年々変動(特に先行シグナル)について
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夏季アジアモンスーンの年々変動(特に先行シグナル)について (江川 晋子) 発表要旨 :
アジアモンスーンはユーラシア大陸と周辺海洋間の季節的な 温度差により、大規模に現われる大気循環系・水循環系である。 ENSOとの関連も研究されており、エル・ニーニョ年には 夏季モンスーンが弱くなることが知られている(Webster and Yang,1992他)。 この弱いモンスーンに先行して冬から春にかけて亜熱帯アジア上の偏西風 (200hPa)が強化される現象が起こる(Webster and Yang,1992;Yang and Lau, 1998など)。これは先行シグナルと呼ばれ、モデル実験でも再現されている (Ju and Slingo,1995;Yang et al.1996)。先行シグナルは、広範囲で長い 期間にわたって見られるため、モンスーン予報の観点から重要であると 言われている(Yang and Lau,1998)。 Yang and Lau(1998)のモデル実験によって、先行シグナルは熱帯太平洋 SSTと局地的な地表面過程の両方によって引き起こされることが示唆されて いる。そのシナリオは以下のようなものである。まず、夏の熱帯太平洋SSTが 高いと、その後の冬、ユーラシア大陸上では降水量(雪)と土壌水分の増加、 地表面温度の低下と海面気圧の増加が見られる。つまり、海陸の温度場、 圧力場のコントラストが強くなる。ここで温度風の関係を考えると、温度の 水平傾度が大きくなった結果、200hPaの偏西風も強化されるのだと 推測できる。地表面過程のみを考えた実験でも、アジア大陸が湿っていると、 夏季モンスーン循環が弱くなり、これに先だって200hPa偏西風の強化が 見られた。 ところが、先行シグナルについての研究にはまだ不十分な点が 残っているように思われる。研究されている期間は短く(1979-88年)、 先行シグナルの有意性、先行シグナルとモンスーンの年々変動との 関連性には尚、議論の余地がある。そこで本研究では、まずECMWFデータを 用いて200hPaの偏西風、熱帯太平洋SST、インド付近の降水の年々変動に ついて検討する。先行シグナル(モンスーンの年々変動)のメカニズムの 一端を理解することが目的である。解析期間は1985-96年についてである。 今後期間をのばしたい。
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