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第 196 回 大気海洋物理系 B 棟コロキウム のおしらせ

日 時:2008年 10月 24日(金) 午後 16:30 〜 17:30
場 所:地球環境科学研究科 A棟 講堂

発表者:岩崎 聡子(大気海洋物理学・気候力学コース M2)
題 目:帯状平均場の予測可能性

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帯状平均場の予測可能性(岩崎 聡子) 発表要旨 :

北半球の冬季、ENSOに伴う熱帯SST偏差に対して北太平洋やアメリカ北部に大き
なインパクトを持つ大気応答があり、ENSOはこれらの地域の高い予測可能性に寄
与している。一方、Schubert et al.(2002)は夏季北半球の季節平均高度場偏差
のうちzonal-mean成分が潜在的に最も予測可能性が高いことを示している。

本研究では夏季北半球の1ヶ月平均場の予報においてもzonal-mean成分の予測精
度が高いことを示し、zonal-mean場に卓越する変動の特性・メカニズム・予測可
能性について調べる。

各緯度の200hPa zonal-mean高度偏差に対するzonal-mean高度場への回帰の結果、
夏季北半球のzonal-mean場の変動は低緯度でコヒーレントに変動するパターン
(熱帯型変動)と中緯度の狭い緯度帯でのみ変動するパターン(中緯度型変動)に分
けることができる。これらのzonal mean変動に関係する200hPa高度場の変動は、
熱帯型の変動に対しては低緯度の広い範囲で東西一様な偏差を示す一方、中緯度
型の変動に対しては北半球中緯度の狭い範囲で波列状の偏差を示す。

これらのzonal mean変動の構造は1ヶ月予報の予報場においても同様にみられる。
さらにzonal-mean場の予測におけるメンバー間のばらつきが小さいことから、
SST偏差によってzonal-mean場が強制されている可能性が高い。zonal-mean変動
に対するSST回帰偏差分布はともにENSOパターンに似ている。熱帯型変動はENSO
イベントの衰退期と相関があり、中緯度型変動はENSOイベントの発達期と相関が
ある。これらのSST強制に対する大気応答を調べるためのAGCM(大気大循環モデル)
アンサンブル実検の概要も示す。

  
  

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連絡先

北海道大学大学院 環境科学院
地球圏科学専攻 大気海洋物理学・気候力学コース
干場康博
E-mail:h-dragon@ees.hokudai.ac.jp