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第 198 回 大気海洋物理系 B 棟コロキウム のおしらせ

日 時:2008年 10月 28日(火) 午後 16:30 〜 18:30
場 所:地球環境科学研究科 A棟 講堂

発表者:嶋田 宇大(大気海洋物理学・気候力学コース M2)
題 目:日本海で発生したPolar lowの発達メカニズム

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日本海で発生したPolar lowの発達メカニズム (嶋田 宇大) 発表要旨 :

2006年12月29日(A事例)、2008年2月6日(B事例)、2008年3月4日(C事例)に
日本海で発生したPolar lowの発達メカニズムをエネルギー収支解析と
Piecewise PV inversionによる診断から調べた。
これらのPolar lowは傾圧不安定的な発達を示唆する明瞭な前線構造を持っていた。

エネルギー収支解析を行った結果、基本場の傾圧性の強さに対応して、
Polar lowの発達時間や水平スケールとともに、発達メカニズムに
大きな違いがあることがわかった。A事例は比較的傾圧場が強い領域で発生し、
温帯低気圧と同様、主に傾圧不安定波の発達するエネルギーの流れによって
発達していた。一方B,C事例は比較的傾圧場が弱いところで発生し、主に台風の
発達メカニズムと同様、非断熱加熱によるエネルギー供給によって発達していた。
この解析によって、ポーラーロウの発生・発達に関する基本的な理解が示された。

渦位アノマリーを、上層の擾乱に伴う渦位、対流に伴う渦位、
下層の温度アノマリーに伴う渦位に分けてそれぞれについて
Piecewise PV inversionを行った。
その結果、Polar lowの循環を直接誘起していたのは、
対流活動に伴う渦位や下層の暖気による渦位であることがわかった。
一方、上層の擾乱に伴う渦位はPolar lowのジオポテンシャル高度を
下げる働きには大きく寄与したが、低気圧性の循環形成への寄与は
あまり大きくなかった。上層の擾乱に伴う渦位が誘起した流れは、
Polar low発生域に暖気を送り込む役割を果たしており、上層の渦に
付随して大陸から流れ込んできた冷たい空気に伴う下層の渦位は
発生域に寒気を送り込む循環を誘起していた。そして、これら
上層の渦に起因する両者の循環が相まって、Polar lowが発生しやすい
傾圧不安定場が形成されたと考えられる。


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連絡先

北海道大学大学院 環境科学院
地球圏科学専攻 大気海洋物理学・気候力学コース
干場康博
E-mail:h-dragon@ees.hokudai.ac.jp