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第 204 回 大気海洋物理系 B 棟コロキウム のおしらせ

日 時:2009年 10月 27日(火) 午後 16:00 〜 18:30
場 所:文系共同講義棟2番教室

発表者:大佐賀 南(大気海洋物理学・気候力学コース M2)
題 目:チベット高原の積雪が大気場に及ぼす影響

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チベット高原の積雪が大気場に及ぼす影響 (大佐賀南)発表要旨:

 チベット高原は、ユーラシア大陸中央部に位置する、標高3000〜5000mの
地域である。夏には地表面が強い日射にさらされ、中部対流圏での熱源と
なる。この熱力学的効果が夏季のアジアモンスーンの変動において重要と
考えられている。チベット高原上で融雪が遅れるとこの効果に影響を及ぼす
ことが予想される。そのため、チベット高原の積雪とアジアモンスーン
との関連を調べる研究が進められているが、そのメカニズムは明らかに
なっていない。

 本研究では、消雪日に着目して、積雪のある期間が大気にどのような影響を
及ぼすかを調べる。データはNSIDCのNorthern Hemisphere EASE-Grid Weekly
Snow Cover and Sea Ice Extent Version 3を使用し、期間は1972年1月〜
2006年12月の35年間である。このデータをdailyに置き換えたデータから、
1〜8月のあいだで最後に積雪がみられた日の次の日を消雪日と定義した。

 消雪日の気候値分布に関して、高原地帯では3月から4月にかけて融雪が
あった。山岳地帯においては、6月以降に融雪する領域と1年中融雪のない
領域があった。また全解析領域において、緯度方向に1度、経度方向に
5度の格子状に70点を定義した。その上で、その各点を中心とした、
全解析領域に対する一点相関解析を行った。
その結果得られた70個の相関パターンは、空間的な特徴に基づき、3つの
グループに分類することができた。
 以上のことと地形を考慮して、1:高原領域、2:横断山脈領域、
3:ヒマラヤ山脈領域の3つの解析領域を定義した。それぞれの消雪日の
平均は、
1:高原領域で70日(3月上旬)、2:横断山脈領域で118日(4月下旬)、
3:ヒマラヤ山脈領域で157日(6月下旬)であった。また3つの領域を
平均すると110日(4月下旬)であった。

 次に、これらの領域ごとに消雪日インデックスを作成した。これをみると、
1:高原領域、3:ヒマラヤ山脈領域でそれぞれ10年間におよそ12日と16日の
早期融雪傾向がみられた。しかし、2:横断山脈領域では、1985年までは融雪が
早くなりその後融雪が遅くなるという傾向があった。以上のことをふまえて、
今後は消雪日インデックスと大気場との関係を調べる予定である。

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連絡先

北海道大学大学院 環境科学院
地球圏科学専攻 大気海洋物理学・気候力学コース
干場康博
E-mail:h-dragon@ees.hokudai.ac.jp