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第 234 回 大気海洋物理系 B 棟コロキウム のおしらせ

日 時:2014/10/15(水) 16:00 -- 17:00
場 所:環境科学院 D201

発表者:三村 慧(大気海洋物理学・気候力学コース M2)
題 目:ATTREX観測データを用いた、TTL内の氷晶形成過程についての研究

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ATTREX観測データを用いた、TTL内の氷晶形成過程についての研究(三村 慧) 発表要旨 :

対流圏から成層圏に流入する大気は、主に熱帯上空の
熱帯対流圏界層(Tropical Tropopause Layer; TTL)
を準水平的に移流しながら低温域を通過し、脱水を経
験する。脱水とは、低温により過飽和状態となった空
気塊中で氷晶が生成(nucleation)・成長(growth)し、
重力沈降により落下(sedimentation)する事で空気塊
から水蒸気が除去される過程であり、TTLにおける空気
塊の脱水量を考察する上で、脱水過程の理解は最も根
本的な議論であると考えられる。

脱水過程のうち、氷晶形成には現在2つの主要な過程
の存在が確認・示唆されている。
1,高過飽和度(160%~170%)を閾値として進行し、高
氷晶数密度(1000~10000個/L)となる、homogeneous 
nucleation(koop et al., 2000)
2,低過飽和度(120%~140%)を閾値として進行し、低
氷晶数密度(100個/L以下)となる、heterogeneous 
nucleation(Jensen et al., 2010)
である。

過去の観測(Shibata et al., 2006;Lawson et al.,
 2008)では、空気塊の氷晶数密度・氷に対する飽和度
のデータが主に取得されてきたが、近年NASAが実施し
ているThe Airborne Tropical TRopopause EXperi-
ment(ATTREX)キャンペーンでは、新たに氷晶サイズ別
の数密度データが得られるようになった。Jensen et 
al.(2013)では、2011年のATTREX観測データを用い、
氷晶数密度と飽和度の観点から、上述の二つの氷晶形
成過程に対応するいくつかの事例を紹介しているが、
全観測期間の事例についての解析や氷晶サイズ分布に
着目した解析は行われていない。本研究では、2011年
のATTREX観測データのうち、Jensen et al.(2013)
で言及されていない事例についての解析を行った。
また、氷晶サイズと氷晶数密度から計算される雲水
量(Cloud water content)に着目し、氷晶形成直前
の飽和度の復元を試みた。今回の発表では、これら
の解析から得られた結果と今後の展望について述べる。

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連絡先

北海道大学大学院 環境科学院
地球圏科学専攻 大気海洋物理学・気候力学コース
池川慎一
E-mail:Ishinichi@ees.hokudai.ac.jp