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第 236 回 大気海洋物理系 B 棟コロキウム のおしらせ

日 時:2015/10/07(水) 15:00 -- 16:00
場 所:環境科学院 D201

発表者:小林 慈英(大気海洋物理学・気候力学コース M2)
題 目:閉じた矩形海洋における渦の軌跡とその軌道決定メカニズム

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閉じた矩形海洋における渦の軌跡とその軌道決定メカニズム(小林 慈英) 発表要旨 :

 近年の衛星観測により、海洋には全球的に水平100kmスケールの中規模渦が多
数存在し、西進することが知られている(Chelton et al., 2011)。例えば、黒潮
続流から切離された高気圧性渦は地球が自転する球である影響 (β効果) により
西進し、東北沿岸に沿って北上、千島列島に沿って北東に進むことが観測されて
いる(Itoh et al., 2010)。西岸と相互作用する高気圧性渦の運動はslip条件に
伴う鏡像渦により再現することができる(Shi et al., 1994),(Itoh et al.,
2001)。西岸と渦の相互作用に関する研究は多いが、渦が西岸を北上した後どの
ような軌道をとるのかはまだ明らかではない。そこで、本研究では1.5層モデル
の四角い海で高気圧性渦が西岸に衝突した後どのような運動を行うかを調べ、そ
のメカニズムを点渦理論に基づいて論じる。まず、slip境界条件を課した1.5層
モデルを用いて半径50kmのガウシアン渦を配置し、その軌跡を得た。渦はβ効果
により西に移動した後、西岸の影響を受け北上し、北岸を伝い東岸へ移動し、離
岸して西に戻ってくる。渦の初期位置を南に設定した場合は、東岸からの離岸の
際、初期とは異なる緯度で離岸する。渦は時間経過と共に減衰しながらこのよう
な運動を繰り返す。渦の減衰により渦が東岸で離岸する緯度は徐々に北へずれて
いく。しかし、初期に渦を置いた緯度と東岸で離岸するときの緯度の違いは減衰
による離岸緯度の北へのずれより明らかに大きい。渦の軌道はどのように定まる
のだろうか? 渦の運動が鏡像渦及びβ効果のみに依存すると仮定した場合の理論
を準地衡点渦モデルにより構築し、ハミルトニアンを用いて点渦の軌道を得た。
この結果から、渦が点として近似できれば初期位置に戻ってくることがわかっ
た。また、領域の南を通る点渦ほど岸の近傍を通る。しかし、渦は大きさを持つ
ことから岸に近づける距離には限界が存在すると考えられる。以上の考察とハミ
ルトニアンの幾何学的性質から渦の軌道乗り換えメカニズムを提言する。発表で
は数値モデル結果、点渦理論の構築及び渦の軌道の乗り換えについて詳しく延べ
る。

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連絡先

北海道大学大学院 環境科学院
地球圏科学専攻 大気海洋物理学・気候力学コース
三村 慧 Mimura Satoru
E-mail:s-mimura@ees.hokudai.ac.jp