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第 250 回 大気海洋物理系 B 棟コロキウム のおしらせ
日 時:2017/10/18(水) 14:00 -- 15:00
場 所:環境科学院 D101
発表者:鈴木 まりな(大気海洋物理学・気候力学コース M2)
題 目:気候-植生相互作用を考慮した過去と将来の北極温暖化メカニズムの比較
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(鈴木 まりな) 発表要旨 :
北極温暖化の予測はモデル間のばらつきが大きく、信頼性の評価と不確実性の低 減が必要とされている。Schmidt et al. (2013) は、現在より北極域が温暖であ った完新世中期(MH)のシミュレーションと将来予測のばらつきについて統計的 相関を示すことで、北極温暖化の将来予測の不確実性が低減される可能性を示し た。しかし、その根拠となる物理プロセスについては言及されていない。そこで、 CMIP5/PMIP3の10個の大気海洋結合モデル出力を解析したところ、両実験ともに、 主に夏に北極域にもたらされた過剰なエネルギーが、一部海洋に吸収され、数カ 月後に放出されて北極温暖化が引き起こされていた。 さらに、これらのプロセ スが両実験ともに、モデル間のばらつきの原因となっていた。このようにMHと将 来の北極温暖化を支配するプロセスには良い共通性が見られた一方で、先行研究 で重要性が指摘されている、気候変化により植生分布が変化する効果は考慮され ていない。本研究では、動態植生モデルを結合した気候モデルを用い、気候と植 生分布の相互作用を考慮した場合の、過去の時代(MH, LIG)とCO2倍増時の北極 温暖化を支配するプロセスを特定し、共通性・相違性について議論する。そして、 陸と海の相互作用による北極温暖化応答の変化を明らかにし、古気候指標の豊富 な陸上を含めた北極域全体の温暖化応答の理解を目指す。古気候指標によりモデ ルの信頼性を評価したのち、2xCO2(MH, LIG)実験について地表面エネルギー収 支解析を行なった。その結果、植生分布の変化は、主に春の65N付近の陸域の温 暖化、夏の北極海のアルベド低下、冬(秋)の北極海の熱放出の増加と温暖化に 寄与していた。この結果から、春に陸域で増加した熱が、夏に北極海に輸送され、 一部が海洋に吸収されて、秋冬に放出されることで、秋冬の北極海上が温暖化す る共通プロセスが考えられる。また、海氷と海面水温が植生分布の変化に応答し ない感度実験を行なった結果、冬の陸域の温暖化が抑えられていたことから、海 陸相互作用が冬季の陸上の温暖化を増幅する可能性がある。南北熱輸送解析を行 ったところ、3実験、感度実験ともに植生分布の変化に伴い、春夏に極循環によ る陸から北極海への熱輸送が増加しており、このプロセスは植生変化の直接の効 果であることがわかった。一方で、冬季に北極海から陸上に熱が輸送されるプロ セスについては、まだよくわかっていない。以上から、植生分布の変化は過去と 将来の北極温暖化を増幅させ、海陸相互作用により、陸上の季節応答に影響する と考察される。
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