空想日誌(3) つらら(氷柱)の思い出

今から30年近く前のことです。

降り続けた雪がようやく峠を越え、降雪観測にも余裕が出てきた朝、ふと観測小屋の庇から下がるつららに目が行きました。つららの先端からゆっくりと落下する水滴が朝日に輝いて綺麗に光っています。近づいてみると、つららの真ん中に小さい気泡が縦に並んで閉じ込められています。何気なく寒さしのぎの軍手でつららの先端に触れてその水を吸い取りました。その先端の形をみて、つららのでき方と、なぜつららの真ん中に気泡が閉じ込められていたのかが分かりました。

調べてみると、意外につららの形成過程について書かれた論文は少なく、後に気象庁長官となり、雷博士としても有名な畠山久尚博士の論文が見つかりました。そこに書かれた内容は、私の考えと同じでしたので、残念ながら「つららの形成過程」という論文は書けませんでした。畠山先生は、小柄ではありましたが実に温厚で品のある紳士でした。ある雑誌に投稿した私の論文が不採択になった折り、その雑誌の編集委員長として直々にいただいた実に丁寧な不採択理由と励ましの自筆の手紙は、今も私の宝物です。

新潟で過ごした子供時代、つららに雪玉をぶつけて屋根から落としたり、折り取って剣の代わりにしたりして遊んでいました。今は断熱の良い家が増えたためつららができる家も少なくなりましたが、北大の遠友学舎の庇には魅力的なつららが良く下がっています。

季節の冬はもう終わりです。

次回の話題は、「雪の詩」の予定です。

2011年4月13日