「大気と海洋に関するスプリングスクール2015」を終えて

谷本 陽一
スプリングスクール事務局 代表
大気海洋物理学・気候力学コース 教授

2015年3月11日(水)から14日(土)にかけて,「大気と海洋と雪氷に関するスプリングスクール2015」を北海道大学・環境科学院にて開催しました.2014年に続けての開催です.

今年のテーマは「雪」.北海道大学では,寒冷圏,雪氷圏,極圏のフィールド科学研究が活発ですので,その一端を参加者に体験してもらう趣旨です.スプリングスクールでは次の3つのプログラムを体験してもらいました.

  • 「雪のプロフィールを調べてみよう」
  • 「雪の中の二酸化炭素を測ってみよう」
  • 「低気圧とジェット気流をシミュレーションしてみよう」

日々の天気を左右する低気圧の振る舞いが降雪に影響をもたらします. 地面を覆う雪はひと冬をかけて徐々に厚みを増していきます. 積もった雪の中では,さまざまな気体が大気からあるいは地面から通り抜けていきます.

これらの雪にまつわる現象を,実際に測ってみたり,コンピュータでシミュレーションをしてみたりという内容です.

この冬はキャンパス内の雪解けの進行が早くて,雪がなくなっちゃう? さらに,開催日前日には,空港周辺で重たいべたべた雪がたくさん降って,飛行機が着陸できない? などなど,準備を始めてから開催当日までやきもきしましたが,初日には全国から12人の学部3年生かたたちが集まりました.

写真1:「雪のプロフィールを調べてみよう」の様子
写真2:「雪の中の二酸化炭素を測ってみよう」の様子
写真3:「低気圧とジェット気流をシミュレーションしてみよう」の様子
写真4: 発表会

「雪のプロフィールを調べてみよう」では,キャンパス内の人が踏み入れていないサイトで地面まで雪を掘り,積雪の断面を観察しました.30cm程度の深さまででも,比較的新しい雪,ざらめ雪,氷板など多彩な雪の姿が見られます(写真1).

「雪の中の二酸化炭素を測ってみよう」では,雪を掘った断面に計測チューブを差し込み,雪の中の二酸化炭素濃度を計測しました(写真2).積もった雪の中の二酸化炭素は大気中の濃度(札幌では,400ppm程度)とはぜんぜん(約1ケタ)違いました.雪の中の濃度は大気の濃度より大きいと思いますか,それとも小さいと思いますか?その秘密を知りたいかたは,来年,ぜひ測りにきてください.

「低気圧とジェット気流をシミュレーションしてみよう」では,地球温暖化の将来予測や日々の天気予報にも使われている大気大循環モデルをシンプルな設定のもとでシミュレートする体験をしました.プログラミング言語に慣れていない参加者でも,取り扱いの簡単なガイダンスを受ければ,自分でシミュレーションすることができます(写真3).最初,地球全体で同じ気温で完全に止まっている(つまり,風が吹いていない)大気に対して,熱帯を暖め,極域を冷やすことを進めていくと,数十日後には偏西風が形成され,さらに時間がすすむと低気圧が見えてきます.

最終日には,参加者のグループ発表会を行いました.3つのプログラムの中から1つを選択して,結果の考察,感想を話してもらいました.限られた時間のなかで熱心に発表準備をしてくだった参加者とティーチングアシスタントの大学院生の姿が強く印象に残っています(写真4).

写真5:遠足(すずらん公園)
写真6:遠足(すずらん公園)
写真7:修了証授与

参加者は新潟大学,東京理科大学,日本大学,東海大学,北海道大学,信州大学,富山大学生の12名で,文字通り全国の国公立私立の大学から参加してもらえました. 高専専攻科にも周知しましたが,残念ながら参加希望はありませんでした.高専の春季休暇の時期などが影響していたかも知れません. 参加にあたり宿泊費は全額支給(宿泊先指定)でしたが,LCCやJRなどを活用して札幌まで来てくださったことを感謝したいと思います.

最終日には希望者を募って,滝野すずらん公園にスノーシューハイキングに行ってきました.日射し溢れる雪の中でアウトドアを楽しんでもらえたと思います(写真5,写真6).

スプリングスクール2016も開催の意向です.最初のアナウンスは2015年後期となりますが,もし,ご質問があればeoas_info *アット* eoas.ees.hokudai.ac.jpにお知らせ下さい (*アット* = @)

2015年4月1日